徳島新聞  鳴潮  2024年8月18日
 

  徳島新聞  「鳴潮」欄 2024年8月18日に関連記事が掲載され,
徳島のSさんが送ってくださいました。
フェイスブック「狭山事件の再審を実現しよう」に文字起こしされていましたので、転載させていただきました。
ありがとうございました。
  机の上に湯飲みが4個。警視が言った。「俺は何でも分かる。見ていない時にお前がどれを触ったかも分かる」。部下を残して取調室から出 た警視は、戻るなり湯飲みを鼻に近づけ、その一つを指した。当たっている、やはりすごい人だ-。信じてしまった。

 狭山事件で61年前に逮捕され、誘導されるままに自白した石川一雄さんの、苦い記憶である。拘置所で文字と法律を学び、手錠をはめられての取り調べが違法だと気付いた。既に一審で死刑判決を受けていた。

 大阪地検特捜部の事件で、担当検事の威圧的な取り調べが刑事裁判にかけられる。長時間の罵倒行為そのものは事の本質ではない、と思う。

 警察と検察の違いはあれど、おかしな取り調べはずっと続いてきたのではないか。菟罪が判明するたびに捜査の適正化が叫ばれながら、事件のためなら人権は二の次といった体質は一掃されていないのではないか。それこそ、いま問わなければ。

 刑事訴訟法によると、検察官も再審請求をできる。「(元被告の)名誉回復のため、検察も公益の代表者として役割を果たすべきだ」。石川さんの弁護団の木村清志弁護士は法の意図を解説する。

 石川さんの再審請求に対し、検察は事実調べに後ろ向きだ。役割を果たすどころか「死ぬのを待っている」(妻の早智子さん)に等しいのではないか