近況

 以前より金聖雄監督から袴田秀子さん(袴田事件、袴田巌さんの姉)、桜井恵子さん(布川事件、桜井昌司さんの妻) 石川早智子(狭山事件、石川一雄の妻)の3人で対談を、との依頼があったが、2月19日実現した。
桜井昌司さんは、1967年「布川事件」の犯人にデッチ挙げられたが、2011年に冤罪を晴らし、今国賠と共に、えん罪をなくすための様々な活動を続けられている。袴田巌さんは1966年に起きた「袴田事件」の犯人にされ、1980年に死刑確定。2014年、3月、私たちが高裁前アピール行動をしている時に、静岡地裁で再審開始決定が出されたと知らされ、高裁前アピール行動をしている人たちが歓喜の涙を流し、「次は狭山だ」との思いを皆で確認した事が記憶に新しい。その後釈放され、すぐにも再審開始、無罪判決が出されると思っていたが、検察が即時抗告をし、今も東京高裁で審議中である。今年度中には判断がだされるそうだ。狭山事件は、闘いの中で証拠開示が進み、無実を明らかにする科学的な新証拠を次々に裁判所に提出している。あとは裁判官が勇気を出して鑑定人尋問=事実調べを行うことが司法の信頼を取り戻すことになるだろう。真実を明らかにするために勇気を出すという事自体信じられないことではある。この3事件の家族としてこれまでどのように闘って来たか、という対談になるのだろうか?よくわからないままに撮影やインタビューに臨んだ。
 3人3様の闘い、考え方があり、話もはずんだ。秀子さんは最初から弟の冤罪を晴らす闘いに関わり、厳しい社会の眼にさらされてきた。私も秀子さんとは狭山に来てから15~16年いろいろな集会で出会わせて頂いたが、巌さんが釈放されるまでの秀子さんは、笑顔の時も目は笑っていなかった。巌さんが釈放されてからは、大きく口を開けてワッハッ八と心から笑う秀子さんに出会い、苦しい人生だったのだなあと改めて思ったものだった。この日「私は巌が出るまでは大きな声で笑ったことが無かった。でも苦しい事ばかり言っても事は前に進まない。負けるものか、と言う気持ちで日々過ごしてきた。せめて畳の上で2日でも3日でも寝かせてやりたいと思ってがんばってきた。今はそばにいる。出て4年になるが、最近よく欠伸をする。最初あくびをした時は、心からくつろいでいるんだとうれしかった。今はまだ拘禁症で現実と現実でない世界を行ったり来たりしているが、なんでも好きなようにさせている。先日も巌が『これからローマに行く』というので、『はいはい行こうね』と言って福岡にいる熊本元裁判官の所に一緒に行ってきた。表情も最初は能面の様だったが、今は表情がある。それだけでいいんだ。3月にどのような判断が出てもまたその時考えればええ」とあっけらかんと話す。ここまでくるまでにどのような苦悩、葛藤があっただろうと思う。
 圧倒的な存在の秀子さん、まだ冤罪が晴れず闘いを続けている私たちに細やかな配慮を忘れない恵子さんの優しさに思わず涙した。この対談がどのような形になるか分からないが、いい対談だったと思う。ご期待を!

 2月17日 保護司さんとの面談  2月16日石川が眼科の診察に。これで最後かと心軽く病院に行ったが、結果は芳しくなく、まだしばらく通う事に。石川は少し落ち込んでいた。 2月20日 滋賀のよっちゃんから「遅れたけどお誕生日おめでとう」とのメッセ-ジとプレゼントが。厳しさも優しさも感じながらの日々を。