5・23メッセージ
確定判決の予断と偏見に満ちた不当な差別判決の前に、現在もなお殺人犯の汚名を背負わされ、仮出獄をした今も、非人道的処遇を強いられ、保護観察所や、保護司への報告を義務付けられてから24年になろうとしておりますが、この生活環境を直視すれば当然の事乍ら、私の憎悪の対象は寺尾判決の一言に尽きる訳ながらも、皆さん方もご承知の通り、此の間に開示された取調べ録音テープ等からも、如何に確定判決がゴリ押しであったか、明らかであり、正しくこの第三次再審闘争の中で、これまでの有罪の証拠に合理的疑いが生じていたかが、満天下に示されており、そうであれば、直ちに真相究明すべく、鑑定人尋問を行うべきと切に願っています。
前述の様に、取調べ録音テープに因って明らかになったのは、自白調書すべてに渡って国家権力、警察が私を狭山事件の犯人にデッチ上げるために仕組んだ証拠の捏造、事件のストーリーであり、証言の偽造、証拠の改ざんの事実を暴露し、警察が私に嘘の自白を強要、強制していたことが決定的に明らかになったのです。
これまでも支援者各位による検察に対して「証拠を隠さず開示しろ」の声に押され、少しずつながらも現在190点以上の証拠が開示され、それに対して弁護団から無実を明らかにする200点近い新証拠が出されています。一度も事実調べ、鑑定人尋問を行うことなく再審を棄却してきたこれまでの裁判所の決定を、満腔の怒りを持って糾弾してきましたが、今度こそ鑑定人尋問を行うものと信じています。
今テレビ等で、警察権力、国家権力、官僚等の不祥事が毎日のようににぎわしていますが、一方では、私の狭山事件の検察の証拠隠しは元より、それを黙認している裁判所の不正義について、取り上げられることはほとんどなく、由々しき問題であると、声を大に訴えます。
今日は55年前に不当逮捕された日であり、各地で沢山の参加のもとで糾弾集会が開かれていると思われ、例年の事乍ら、感謝の気持ちで一杯です。
振り返れば、この55年は途轍もなく長い道のりでありましたし、またある時は闘いを放棄して終いたいと思ったこともありましたが、皆さん方をはじめ、全国の子どもたちから「石川さんがんばって下さい。私たちも応援しています」という手紙に励まされて、心折れずに闘い続けてこられました。
55年の今日まで、未だ冤罪を晴らすことは出来得なかったけれども、この第3次再審で必ず再審の扉が開かれると確信し、自分自身の為、また、何よりも長年にわたって支援し続けて下さった多くの支援者の皆さんの声に応えなければと、日々、自分自身に鞭うって頑張っております。
皆さんお一人おひとりが石川一雄になり、真相究明のために裁判が開かれるように署名活動や、様々に闘って下さっている事を思うと一層の闘争心が湧き、「これしきのことでへこたれないぞ」との覚悟でおります。
昨年12月に就任した後藤真理子裁判長も、取調べ録音テープ等を驚愕を持って聴取され、また、福江、下山、川窪鑑定等の科学的な鑑定もしっかり確認されている筈であり、だからこそ、事実調べや鑑定人尋問の必要性、重要性を認識されていると信じております。
今日の集会をバネに、現審の後に裁判はないと自分自身に言い聞かせ、不屈に闘って参りますので何卒私の固い決意をおくみ頂き、最大限のお力を下さいますよう心からお願い申し上げて私の挨拶に代えて失礼いたします。
2018年5月23日
石川 一雄